2010年6月12日土曜日

LED電球の知られざる真実

今回は今注目のLED電球について知られざる一面について考えてみたい。


ずばり、LED電球は買いか?・・・結論から言うとNOである。
技術的にはまだ未完成であるというのが当ブログの結論である。


LED技術の最新の技術動向をバイアスなしに調べる方法があれば、そこにLEDの課題が見えてくるはずだ。
世の中の記事というものは多かれ少なかれバイアスが入っている。メーカー発表の資料は本当の問題を決して語りはしないし、何らかのメディアもスポンサーの関係を無視した記事を書きにくいからだ。


しかし、最新の技術動向は企業によって厳重に機密保持されているかといえば、むしろ逆で、積極的に公開されている。それは、特許という制度があるためである。
通常の研究開発はこのような順番で進められる。
  1. 研究開発(アイディア)
  2. 特許出願
  3. 商品開発
  4. 論文発表
  5. 商品化
つまりアイディアが出た時点で我先にと特許出願をしてしまう。さもなければ競争相手が同じアイディアを出願してしまうかもしれないからである。
そして、出願から1年半後に公開される(日本の場合)。
よって、最先端の研究成果のわずか1年半後には世界中の人に向けて公開される。よほど単純な技術でない限り、この時点(1年半後)ではまだ商品化されていない。
つまり、私たちは誰でも、これから商品化されるかもしれない最新の研究成果を見ることが出来る。


話は戻るがLED電球についてこのような特許が出願されている。
この特許は LED電球について非常にわかりやすく説明してくれている。
特開2007-5549
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色発光LEDランプに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、白色を発光させられる白色発光LEDランプには主に三種類ある。一つ目は、青色LEDを、青色励起で黄色光を発光する黄色発光蛍光体を含む透明樹脂で覆ったもの(特許文献1参照)、又は、青色LEDを、青色励起で緑色光を発光する緑色発光蛍光体と青色励起で赤色光を発光する赤色発光蛍光体を含む透明樹脂で覆ったランプパッケージであり、青色LEDからの青色光とこれにより励起した黄色発光蛍光体からの黄色光とを混合、あるいは青色LEDからの青色光とこれにより励起した、緑色発光蛍光体からの緑色光および赤色発光蛍光体からの赤色光とを混合することにより、白色光とするものがある。
【0003】
二つ目は、紫外線LEDを、紫外線励起で青色光を発光する青色発光蛍光体と紫外線励起で緑色光を発光する緑色発光蛍光体と紫外線励起で赤色光を発光する赤色発光蛍光体とを含む透明樹脂で覆ったランプパッケージであり、青色LEDからの紫外線で励起した、青色発光蛍光体からの青色光、緑色発光蛍光体からの緑色光および赤色発光蛍光体からの赤色光を混合することにより、白色光を得るものである(特許文献2参照)。
【0004】
三つ目は、パッケージ内に青、赤、緑それぞれに対応する3つのLEDチップを搭載して樹脂封止したランプであり、各色のLEDを同時発光させ、混色し白色とするものがある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−55772号公報(図8)
【特許文献2】特開2001−111114号公報
簡単にまとめると
白色を発光させられる白色発光LEDランプには主に三種類ある。
  1. 青色LED+蛍光体
  2. 紫外LED+蛍光体
  3. 3色LED
そして、課題としてはこのように書いてある。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した3タイプの白色発光LEDランプのうち、赤色発光蛍光体を使用するものに関しては、現在、赤色を発光する蛍光体で青色や紫外線を赤色に変換する変換効率の高いものが実用化されていない為、照明として使用した場合、赤色の色再現が不十分である。また、青色LEDの発光と黄色発光蛍光体の発光とによって白色を作り出しているものでも、赤色成分がほとんど含まれていないため、照明に適用する場合に赤色の再現が非常に低い。
【0006】
さらに、青、赤、緑の3色のLEDチップを使用する場合は、各色のLEDが優れた単色性ピークを有するために、色むらが生じやすいという問題があるとともに、3つのLEDそれぞれに電源回路が必要になるのでコストが高くなるといった問題もある。
つまり、照明用として使うには色の再現性が低いと言うことである。現在は1の青色+蛍光体のLEDが主流である。この方式は赤の再現性が低い。赤色の再現性と言うのは人間にとって非常に重要であると考える。女性が口紅を塗るのは赤色の印象が特に際立っているからだと考えられる。よって、照明という用途を考えたとき、非常に重要なポイントをクリアしていないというのが当ブログの結論である。


ちなみに上記の特許は2005年出願であるからすでに技術が進歩して解決した可能性がある。
そこで違う特許を調べてみた。
特開2010-092993 
光源としてLEDを用いた照明装置においては、青色LED、緑色LED及び赤色LEDの3種類の異なる発光色のLEDを用い、これらのLED夫々の発光強度を制御することにより、電球色~昼光色の範囲に亘って照明光の色温度を自在に変化させることが可能となる。図11は、照明光の色温度が5000Kになるように青色LED、緑色LED及び赤色LEDを点灯したときの分光分布を示す図である。なお、図11の横軸は波長(nm)を、縦軸は相対強度を夫々示している。図11に示すように、これら3種類のLEDからの光の重ね合せにより得られる照明光には、580nm近傍の波長領域のスペクトルが殆ど存在しない。これは、青色LED、緑色LED及び赤色LEDが、優れた単色性を有している、即ち発光スペクトルの半値幅が白熱電球又は蛍光灯と比較して狭いためである。この結果、黄色~橙色の物を正しい色で見ることができず、演色性が良くないという問題がある。なお、演色性は、色の見え方に及ぼす光源の性質であり、演色性が良いほど、物の色が自然な感じに見えることになる。
従来の技術例のスペクトル分布
本来は連続したなだらかなカーブになるのが理想である。
これでは物の色が正確に見えるとは思えない。
この発明の実施例によるスペクトル分布
上の例よりかなりよくなっているが、
非常にピーキーな山が残っている。


つまり、2010年に公開されたこの特許でも、演色性・・・色の見え方の問題は解決されていないようである。しかもこの特許の方式は3色混合法式である。これは先述の特許ではコストが高くなると書いてある。お金をかけてこの現状でLED電球にどのようなメリットを見いだせるのであろうか?・・・電球型蛍光灯に対して明らかに勝っているのは、

  • 寿命
  • レスポンス

くらいと思われる。トイレ用?私なら白熱電球を使う。

1 件のコメント:

  1. 光源としての演色性だけが評価の基準ではないと思います。
    わが国では、例えば住宅の照明など、まだ遅れていると思います。
    ある意味一番大事な素敵な時間を過ごすリビングルームなどでも、照明のモードが下手をすると ON-OFF の二つしかなかったりします。
    我が家では LED をかなり使用していますが、あくまでも選択肢、組み合わせの
    一つです。既存の器具で調光、調色が出来る上に何と言っても消費電力が少ないのは非常に重要です。蛍光灯はもってのほかですが、他の光源(キャンドルまで含めて)との組み合わせで光を楽しむ幅が大きく広がりました。

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