LHC(大型ハドロン衝突型加速器)が稼働しているが、当初ブラックホールが生成してしまうのではないかという話題があった。ついに人類はブラックホールを作り出すことができるのであろうか?
地球が吸い込まれる?・・・心配ない。ブラックホールといえども、質量が同じなら発生する引力は通常の物質と同じである。ホコリほどの質量のブラックホールを作り出すことが出来たとしても(おそらく、それでも十分に不可能なほど大きいと思われるが)発生する質量はホコリと同一である。ホコリを吸い込んだことがある人は多いと思うが、ホコリの引力に吸い込まれていった人はいないと思われる。
それはさておき、今回は人類がいつの日かブラックホールを自由に使いこなせるようになった時のためにその有意義な利用法について考察してみる。
以下のような利用法が考えられている(参考文献1.)。
1.ブラックホールゴミ箱
これほど実現性がなさそうな割に大したことはない利用法もないのだが、何でも底なしに吸い込んでしまうという特性を利用したものである。ひょっとしたら放射性廃棄物のような処理しきれないものを処理するには便利かもしれないが、リサイクルができなくなるという難点がある。
しかし、ブラックホールがあまりにも小さいと、吸い込む速度が非常にゆっくりになってしまう。ブラックホールは底なしではあるが、入口の大きさは有限である。ゴミ箱として有効な物を作るには相当な質量のものを作る必要がある。よって、リビングの片隅に便利なアイテムとして登場するのは期待しない方がいいだろう。
2.ブラックホール灯
ブラックホールに物質を落とすと、吸い込みきれない物質はエネルギーとして吐き出される。その際、ブラックホール周辺の物質が光り輝く。ただし、ガンマ線などを放射されても、明るくならない上に健康にも良くないと思われる。リビングに使うランプとしては、今のところ電球型蛍光灯が良さそうだ。
3.ブラックホールエンジン
これはかなり実用性が高そうだ。ブラックホールから出るジェットを推進力として使うアイディアである。しかも一度建造してしまえば、心臓部のブラックホールのメンテナンスは必要ない。それどころか、人類が滅亡してもなおジェットを吹き続けそうである。ただし、危険極まりないブラックホールをどのように保持するか、高速で吹き出すジェットをどのように制御するか、この辺がこの技術の肝になりそうだ。「風の谷のナウシカ」に出てくる滅亡した過去の高度な文明が使用していたエンジンはこのような物なのかもしれない。
4.ブラックホール発電所
これはなかなか技術の規模とニーズの大きさのバランスがとれたアイディアである。こちらも建造してしまえばいくらでもエネルギーを取り出せそうだ。厳密には「フリーエネルギー」ではないが実質的にそう考えても良いかもしれない。参考文献1.の福江純氏によると
4000万トン級のブラックホール発電所が、出力2300憶Wと見積もられている。ただし、3兆度もの温度になるようだが・・・。
5.ブラックホールウエポン
ブラックホールの潮汐力を利用した武器である。しかし、当ブログではこれはあまり実現性が無いのではと考えている(これまで紹介したものすべて実現性はなさそうだが)。理由は人類が今のように好戦的であり続ける限り、テクノロジーの進歩は人類の生存を脅かす方向にしか使われないと思われるからである。つまり、ブラックホールウェポンが製造されるような高度なテクノロジーを手に入れることが出来る前に、人類は自らの手で滅亡してしまうだろう。よって、ブラックホールウェポンは決して製造されることはないだろう。
当ブログのイチオシのアイテムは何か・・・個人的には1.のブラックホールゴミ箱である。
実現に必要な技術の高度さと、使おうとするニーズの低レベルさのアンバランスが素敵である。
参考文献
1.ブラックホール宇宙 福江 純 サイエンス・アイ新書
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